パルパルパピヨン’s diary

なんでも書くのです。

実験参加者をどうみるかによって 実験参加者ができることが規定されてしまう!! ピアジェ理論の破綻 1

理論は人々の生活や考え方に大きな影響を与えます。一般人の「物事の考え方」は知らずのうちに理論にコントロールされているかもしれません。今回はかの有名な「ピアジェの発達理論」を取り上げ、その概要と理論の前提となっている人間観、そして「我々は理論をどう捉えて生きていけばいいのか」、などを探求します。(ピアジェはタイム誌発表の「20世紀で最も重要な・偉大な100人」にランクインされるほどの研究者です)

はじめに、ピアジェ理論の発達思想です。発達心理学の教科書でピアジェは、「個人能力還元主義」をとると紹介されています。つまり、個人が様々な能力を獲得していく過程が発達である、としているのです。ピアジェは人間の発達段階を「何かを操作する」という観点から以下の4段階に区分しました。①感覚運動期(0~2歳)②前操作期(2~4歳)③具体的操作期(5~12歳)④形式的操作期(13歳~)(厳密には、④は弟子であるエリクソンが後に付け加えたと言われています)。①→④に向け、だんだんと「何かを操作する能力」が獲得されるとしました。また、「表象」という言葉によって、人間特有の高次な思考方法を説明しました点も重要な指摘でした。表象とは、現実で触れる様々なモノ・コトを理解するための意識の体系のことです。例えば、犬を例に挙げましょう。なぜ私たちは、トイプードルでもミニチュアダックスフントでもブルドックでも野良犬でも、それらを見た瞬間に「犬だ!」と分かるのでしょうか。それは、それぞれを個別に捉えているのではなく、何か抽象的な「犬としての意味まとまり」なるものが頭の中で発達しているからだとピアジェは論じ、それを「表象能力」や「シンボル思考」という言葉で表したのです。ピアジェの大きな貢献は、これらの発達段階の整備を行ったことや表象能力の発達を示したことに見て取ることができます。

次にピアジェの人間観(研究観)についてです。ピアジェの名が広く知られている割にあまり知られていないこととして、彼が生物学者であることが挙げられます。つまり、実験対象を「観察」し、「自然のうちに」どうなっているのかを調べ、理論としてまとめる手法が<ピアジェ式研究法>ということです。ピアジェの理論をベースにして、「三つ山問題(相手の立場から思考ができるか)」や「数・量の保存課題(状況が変わっても同じままでいることがわかるか)」、そして「誤信念課題(他者に心があることがわかるか)」などがつくられ、課題にパスできる年齢とできない年齢を量的研究によって明らかにし、5歳までの子どもには「自己中心性」がある、7歳までの子どもは「論理的思考」ができない、などとされてきました。

一般的に、これら結果は受け入られやすいと思います。子どもは相手の気持ちがまだ分からないからよく自己主張するのだろうと考えられますし、物事を整理して考える力もまだ未熟であると言われると、自身の経験から「確かにそうだったよなあ…」と妙に納得してしまうのではないでしょうか。

しかし、ピアジェの理論は近年では否定されています。三つ山問題や数・量の保存課題、そして誤信念課題は乳幼児期(0~2歳)の子どもでさえもパスできるという報告がなされています。その詳細は次回で触れたいと思います。

今日はこの質問で締めたいと思います。「ピアジェ理論の問題点」とは何だったのでしょうか?