実験参加者をどうみるかによって 実験参加者ができることが規定されてしまう!! ピアジェ理論の破綻 2
前回はピアジェ理論の概観について触れました。今回はピアジェ実験の内容をまとめたいと思います。
繰り返しますが、ピアジェの理論は現代では否定されています。他人の立場に立って物事を考えられない幼児の気質をピアジェは「自己中心性」と呼び、幼児期では心の理論が未発達であると結論づけ、また状況が変わっても同じであり続ける性質である「数・量の保存課題」も、幼児はパスできないとしましたが、現代では幼児だけでなく乳児でさえも「他者の心」が分かっており、「数・量の違い」が分かると言われています。今回はピアジェ理論ご紹介しますが、次回以降は反証実験を示し、なぜ「パラダイムの転換(時代の根本思想がひっくり返ること)」が起こったのかを探っていきます。
ではまず「三ツ山問題」です。
図1のような図形を子どもに見せ、各方面(A,B,C,D)からそれぞれ山がいくつ見られるか、など今いない視点から物事を把握することはできるかを問います。ピアジェは、前操作期(2~7歳くらい)にあたる子どもはこの課題に
正答できず、別の視点から物事を捉えられない時期としてその気質を「自己中心性」としまし
た。続いて、「数・量の保存課題」です。
図2の左側をご注目ください。同じコップにはいった同じ量の水(量の保存課題)、同じ数のおはじき(数の保存課題)とがあります。これらを別の形のコップに移し、またおはじきを同一直線上に延長します。そして、子どもに「水の量は同じかな?」「おはじきの数は同じかな?」などと質問すると、大体の子どもは「増えた!」と答えます。この結果をピアジェは、子どもとは物事の見かけに騙されやすく、論理的に考えられないと結論づけました。最後に、「誤信念課題」です。
図3では、自身がおいたパンが移動させられていることを知らないサリーが家から帰ると、サリーのバスケットとアンの箱のどちらからパンを取り出そうとするかを子どもに問います(正解はサリーのバスケットから取り出そうとする)。しかし、幼児期の多くの子どもはアンの箱を選んでしまいます。これをピアジェは、4歳未満の子どもは他者に心があると推論する能力(いわゆる「心の理論」)が未発達であると結論づけました。
以上がピアジェによる実験です。その結果、前操作期(2~7歳頃)の子どもの特質として、「自己中心性」があり、「数・量」の理解が不十分であり(~4歳頃)、「他者に心があること」が分からない(~4歳頃)、としました。当時は体系立った発達の枠組みはまだ確立されていなかったため、大きな反響を呼びました。
次回は、ピアジェの反証実験に触れたいと思います。